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内部エネルギーのキーワードで特許検索
「内部エネルギー」「気体」のキーワードで、特許を検索して、今回はこちらの特許で理解を深めたいと思います。
【公開番号】特開2019-164948(P2019-164948A)
【公開日】令和1年9月26日(2019.9.26)
【発明の名称】燃料電池システム
【出願人】
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
最近公開された特許です。
再生可能エネルギーなど、環境に配慮した技術は今後ますます重要になる分野です。
その中のひとつ、燃料電池に関する特許です。
物理の熱力学、気体の内部エネルギーを学んだ後に、こちらの特許を読んでみました。
最初に読んだ時は、あまり内容理解ができませんでした。
原因は、燃料電池の背景知識が少なかったことにあります。
この特許を読み解くため、まずは企業のサイトなどを使って、燃料電池に関する用語と仕組みについて理解することが必要です。
今回は、燃料電池の用途が、車両に使われていたので、車両に搭載された燃料電池を中心にまとめてみます。
燃料電池車とは
燃料電池車 (FCV:Fuel Cell Vehicle )
図 http://www.jari.or.jp/portals/0/jhfc/beginner/about_fcv/index.html
FCVは、水素を燃料とし、走行時の二酸化炭素排出量をゼロにする車両として注目されています。
水素ステーションなどから供給した水素を、車両内の水素タンクに蓄え、空気(酸素)と発電させ、モーターを回して車両を走らせています。
燃料電池スタックとは
こちらは、FCVの心臓部となる燃料電池スタックです。
この燃料電池スタックは、水素と酸素が反応させ、発電を起こしているとても重要な部分です。
【図】https://www.cataler.co.jp/aee2018/electro/fcv.php
燃料電池スタックは、セルと呼ばれる構造が積層した状態になっています。
セルは、ガスや空気を遮断するセパレータと呼ばれる部品の間に、MEA(電解膜の両面にプラスの電極板とマイナスの電極板がある)が挟まれた集合体です。
セルのプラス極とマイナス極には多くの細い溝があり、この溝を外部から供給された空気(酸素)と水素が通ることによって、反応が起こり発電します。
1枚のセルでは出力できる電気の量は限られているので、セルがいくつも積層されたスタックという構造になっています。
酸素と水素から発電する仕組み
まずは水の電気分解の復習です。
水は電気分解すると水素と酸素に分かれるというものです。
水分子H₂Oに電圧をかけると、酸化・還元反応が起こります。
2H₂O→2H₂+O₂
H₂Oは、電圧をかけることで、H⁺(水素イオン)とOH⁻(水酸化物イオン)に電離します。
陽極側で、OH⁻は電子を放出(酸化反応)して酸素が発生します。
陰極側では、H⁺は電子を受け取り(還元反応)して、水素が発生します。
図 https://panasonic.biz/appliance/FC/about_fuelcells/index.html
燃料電池の反応は、この水の電気分解の逆の反応になります。
水素タンクから送られた水素が、いったん燃料電池スタックで電子(e‐)が取り出され、水素イオンになります。
取り出された電子は、電解質膜を通ることができないので外部回路を通り発電をした後、反対側の電極に移動します。
電解質膜中を移動した水素イオンは、反対側の電極に送られた空気(酸素)と、外部回路を通ってきた電子と反応して水になります。
図 https://www.jeea.or.jp/course/contents/09402/
このようにして、燃料電池スタックでは、発電をします。
この仕組みを理解したうえで、特許を見ていくと、書かれていることが理解できるようになりました。
【背景技術】
【0002】
燃料電池スタックを構成するセルのアノードには水素を含んだ燃料ガスが供給され、セルのカソードには酸化剤としての酸素を含んだ空気が供給される。セルでは、水素と酸素との電気化学反応によって発電されると共に、カソード側からは、水素と酸素との電気化学反応によって生成された水と、水素との反応に供された酸素以外の成分のガスが排出される。このカソード側から排出されたガスが供給ガスとしてボルテックスチューブへ供給され、ボルテックスチューブから排出された冷気及び暖気の一方によって燃料電池スタックを冷却又は加熱することも考えられている(一例として、下記特許文献1を参照)。【0014】
<本実施の形態の構成>
図1に示されるように、本実施の形態に係る燃料電池システム10は、燃料電池を構成する燃料電池スタック14を備えている。燃料電池スタック14は、複数のセルを備えている。燃料ガスとしての水素がセルの正極(アノード、燃料極)と正極側のセパレータとの間を流れ、酸化剤としての酸素を含む空気がセルの負極(カソード、空気極)と負極側のセパレータとの間を流れることによって電気化学反応が生じ、これによって、発電され
る。
【0015】
燃料電池スタック14は、車両12に搭載された駆動ドライバを介して駆動装置としての車両駆動モータへ電気的に接続されており、燃料電池スタック14から車両駆動モータへ電力が供給されることによって車両駆動モータが駆動される。車両駆動モータの出力軸は、車両12の駆動輪16(図2参照)へ機械的に接続されており、車両駆動モータの駆動力が駆動輪16へ伝わることによって車両12は、走行できる。
【0015】
燃料電池スタック14は、車両12に搭載された駆動ドライバを介して駆動装置としての車両駆動モータへ電気的に接続されており、燃料電池スタック14から車両駆動モータへ電力が供給されることによって車両駆動モータが駆動される。車両駆動モータの出力軸は、車両12の駆動輪16(図2参照)へ機械的に接続されており、車両駆動モータの駆動力が駆動輪16へ伝わることによって車両12は、走行できる。
【0016】
また、燃料電池スタック14のセルの近傍には、冷却液流路18が配置されており、冷却液流路18には冷媒としての冷却液が流れる。冷却液は、例えば、水に凍結防止剤、防腐剤等の添加剤が添加されることによって形成されている。燃料電池スタック14のセルにおける水素と酸素との電気化学反応は、発熱を伴うが、冷却液が燃料電池スタック14のセルの近傍を通過した際にセルと冷却液との間で熱が交換されることによってセルが冷却される。
【0017】
この冷却液流路18の両端は、熱交換器又は第1熱交換器としてのラジエータ20へ接続されており、冷却液は、ラジエータ20を通過する。図2に示されるように、ラジエータ20は、例えば、車両12のエンジンルーム内におけるラジエータグリルの車両後側に配置される。車両が走行すると、走行風W1(図2参照)がラジエータグリルを通ってエンジンルーム内に入る。このようにエンジンルーム内に入った走行風W1がラジエータ20を通過する。走行風W1がラジエータ20を通過した際に、走行風W1とラジエータ20を通過する冷却液との間で熱が交換されることによって、冷却液が冷却される。
水素と酸素の反応が起こり、燃料電池スタックは発電するため、セルが高温にならないように、熱を冷却する冷却液流路がスタック内を流れます。
燃料電池スタックを流れて熱を受け取った冷却液は、ラジエータ20で外部から取り込んだ走行風によって、また冷却されることになります。
水素の流れに注目していきます。
まず、水素は22のタンクに高圧の状態で貯蔵されています。
圧力計により一定の圧力を保持した状態で、26(28)の流路を通って、36の膨張機へ送られます。
この膨張機は、燃料電池スタックにつながっています。
高圧の水素は、36の膨張機で、断熱膨張されて減圧されます。
気体である水素が、断熱膨張状態になるとどうなるか?を確認。
断熱膨張状態とは、断熱した状態の容器で、気体を膨張させます。
気体が膨張するということは、気体が外部に正の仕事をしたことになります。
よって、外力は気体に負の仕事をすることになります。
ΔU=Q+W の公式にあてはめると
Q=0、W<0です。※気体の内部エネルギーΔU、外部がした仕事W
よって、内部エネルギーは減少するので、気体(水素)の温度は下がります。
【0018】
一方、本燃料電池システム10は、タンク22を備えている。タンク22には、上述した燃料ガスとしての水素が高圧の状態で貯蔵されている。タンク22の、例えば、口金部分には仕切弁24が設けられている。仕切弁24の排出ポートには、供給路としての燃料ガス流路26を構成するメイン流路28の一端が接続されている。メイン流路28の他端は、燃料電池スタック14の正極側の供給ポートへ接続されており、タンク22は、仕切弁24及びメイン流路28を介して燃料電池スタック14へ接続されている。
【0019】
メイン流路28の中間部には、第1調圧弁30が設けられている。第1調圧弁30の供給ポートは、メイン流路28によって仕切弁24の排出ポートへ接続されている。第1調圧弁30は、例えば、減圧弁によって構成されている。第1調圧弁30よりもメイン流路28の下流側での水素(すなわち、第1調圧弁30の排出ポートから流れ出る水素)の圧力は、第1調圧弁30によって一定に保たれている。また、メイン流路28における第1調圧弁30の供給ポートと仕切弁24の排出ポートとの間には、第1圧力センサ32が接続されており、例えば、タンク22内の水素の圧力等が第1圧力センサ32によって検出されている。
【0020】
一方、第1調圧弁30の排出ポートは、メイン流路28によって第1制御弁34の供給ポートへ接続されており、第1制御弁34よりも下流側での水素(すなわち、第1制御弁34の排出ポートから流れ出る水素)の流量が第1制御弁34によって制御されている。第1制御弁34の排出ポートは、メイン流路28によって膨張機36の供給ポートへ接続されており、第1制御弁34を流れた水素は、メイン流路28を流れて膨張機36へ供給される。膨張機36へ供給された水素は、膨張機36において断熱膨張されて減圧される。膨張機36は、出力軸38を備えており、膨張機36における水素の断熱膨張の過程で水素の内部エネルギーは、出力軸38の回転に供される。これにより、水素の温度は、断熱膨張の過程で下がる。
まとめ
今回は、特許の「内部エネルギー」の部分だけをとりあげたので、実際の発明が解決しようとしている部分は別にあります。(ボルテックチューブに関する箇所が焦点になっています)。
この特許を完全に読み解くには、ボルテックスチューブ、コンプレッサとラジエータについての背景知識も必要ということです。
今回の学びは
図面が読める=特許の言いたいことが見えてくる
です。
最初は時間はかかりますが、特許につなげて、物理を進めていく方向性は間違ってないかなと思っています。
参照サイト
JHFC(水素・燃焼電池実証プロジェクト)http://www.jari.or.jp/portals/0/jhfc/beginner/about_fcv/index.html
ENEOS水素サプライ&サービス https://www.eh.jx-group.co.jp/hydrogen-energy/running-with-hydrogen/
日産 https://www.nissan-global.com/JP/TECHNOLOGY/OVERVIEW/fcv_stack.html
キャタラー https://www.cataler.co.jp/aee2018/electro/fcv.php
豊田自動織機 https://www.toyota-shokki.co.jp/news/release/2014/11/19/000035/
パナソニック https://panasonic.biz/appliance/FC/about_fuelcells/index.html
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